一般的な木材(板とか角材とか)の場合は通常、電気抵抗式、又は高周波式の含水率計が用いられます。
電気抵抗式(左)と高周波式の木材含水率計 |
どちらもチップの水分測定には使用できません。電気抵抗式はあたりまえですが、高周波式の場合もチップの間には空隙があるので、その空気を測ることになってしまうからです。
余談ですが、高周波式の含水率計を使用する場合、薄い板を測定するとやはり空気を測ることになるため注意が必要です。下の「測定上の注意」の機種の場合、測定範囲は厚さ1~4㎝の範囲となっています。薄い板は所定の厚さになるよう重ねてから測定します。
では、チップの水分測定の方法ですが、実は、迅速、正確、安価といった全ての条件を満足する測定方法が無いのが実情です。主な測定方法を列挙しますと、
1)温度をかけてチップの水分を飛ばし重量変化を測定 ・・・製紙会社の方法
2)ポータブルな加熱乾燥式水分計を用いる方法 ・・・ボイラーメーカーさんは現在これ
3)容積重量の換算表を作っておく ・・・小規模ボイラー施設が用いている方法
4)チップ専用の水分計を用いる ・・・現在のところ測定器は輸入品のみ
以下、個々に見ていきます。
1)温度をかけてチップの水分を飛ばし重量変化を測定
製紙会社さんが一般的に用いている方法です。製紙会社では、チップの検収(納入時の検査)をする際トラックごとに1㎏程度のサンプルを採取し、オーバーサイズ・ダスト・バークといった欠点とクリーンチップを分けてそれぞれの重量を測定した後、105℃程度で8~9時間乾燥(JIS Z 2101又はJIS Z 7302-3に準拠した方法)してチップを絶乾状態にし、その重量差で水分を測定しています。
チップを運搬してきたトラックは、製紙会社のトラックスケール(トラックの重さを測定する台貫)に乗ってチップの重量が測定され、チップの代金はトラックごとに、クリーンチップの絶乾重量に応じた金額が支払われます。
余談ですが、製紙会社の方々とお話をすると、しばしば「絶乾トン」という言葉が出てきます。単位はBDt(Bone Dry ton)で、骨まで~♪(城卓矢、わからんか?)というかカラカラの状態だ、という意味なのでしょう。製紙会社は、紙の原料として歩留まりのみを評価する、というわけですね。
この方法の弱点は、まず測定に時間がかかることです。また、重量を測定するトラックスケールを備える必要がありますが、小規模なボイラー施設でトラックスケールを備えることは無理があります。
2)ポータブルな加熱乾燥式水分計を用いる方法
ボイラーメーカーさんがボイラーを設置しテスト運転をする際、よくこれが使われています。
原理は1)と同じで、乾燥用ヒーターの付いた重量計にチップを入れて、乾燥前と後の重量差で水分を測定します。
加熱乾燥式水分計 |
3)容積重量の換算表を作っておく
岩手県内の小規模ボイラー施設でしばしば用いられている方法です。
もし、取り引き先のチップ工場又は製材工場がいつも同じで、樹種もはっきりしているのなら、チップの容積当りの換算表を作っておくのが良い方法です。
その方法は、一定容積の容器(例えば10リットルのバケツ)にチップをすり切りで満タンに入れて全体の重量を測定し、その重量から空容器の重量を差し引いてチップの重量を測定します。そのチップの水分を乾燥法で測定し、それの数字を元にチップ重量とチップ水分の換算表を作成します。あとは同じ容器で重量を量ればその表から水分の割合を読みとるわけです。
なお、換算表の作成にあたっては、できれば水分率の違うもので数回、正確な水分測定が必要ですから、それには各県の林業試験場の協力を得ると良いと思います。換算表ができれば、あとは台ばかりだけでOKです。
この方法により、岩手県林業技術センターで作成した換算表がこちらです。参考になるので、以下にも掲載しますね。
※当時のものなので、水分が「乾量基準含水率」表示になっていることにご注意ください。
この方法の弱点は、切削チップと破砕チップの両方を使用したり、あるいは取引先によってチップの形状が異なる場合、それぞれに換算表が必要になることです。また、樹種が混ざった場合も精度があやふやになります。
丸太をチップにした場合、空隙が増えて容積が増しますが、その割合は切削チップの場合2.8倍程度といわれています。1㎥の木材をチップにしたら2.8㎥になる、ということですね。
ただしこれは、チッパーの機種・種類、チップが切削か破砕かによっても異なりますから、上記の岩手県林業技術センターの換算表も目安であって、実測してみないと正確なことは言えません。
また、先にお話したとおり、木材は樹種によって比重が異なりますから、樹種がはっきりしないとこれまた正確なことが言えなくなります。
4)チップ専用の水分計を用いる
もし、チップの水分をその場で即座に測定できるのなら、全て問題は解決します。
調べてみると、欧州のバイオマス先進地では「チップ水分計」が出回っているらしいのです。
オーストリア製のチップ水分計 |
弱点は水分計の値段が高いことです。なにしろ、左のhumimeter BLLで25万円、右のhumimeter BM1で50万円と、小規模施設で購入するには無謀な値段になっていますww
左のhumimeter BLLの写真を見ると、金属製のロッドをチップに差し込んでいるので、原理はおそらく電気抵抗式だと思います。同じ原理で国産の牧草水分計は10万円程度、土壌水分計だと3万円しません。単に、輸入の専用機だから高価なのだと思いますが、違うでしょうか?
ここはひとつ、国内の測定機器メーカーさんに、木材チップの含水率を管理できる測定機器の開発を早急に行うことを、お願いしたいと思います。
次回は燃料チップの規格について整理し、その後、熱量と単価について考えてみたいと思います。
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