木質バイオマス利用に役立つ忘備録です。これは!と思った情報を随時アップして参ります。

2014年3月9日日曜日

高位発熱量と低位発熱量

灯油などの燃料を燃やしたときも、薪やペレットをなどの木材を燃やしたときも、燃焼ガスには(主として)二酸化炭素、及び水(水蒸気)が含まれることを前回お話しました。

熱した水蒸気は温度が下がると水滴になりますが、水蒸気が水滴に変化するとき、周りは(あるいは水滴が付着する機器は)暖められることになります。逆に、水滴を水蒸気に戻そうとすれば水滴が付着した機器を暖めなければなりません

つまり、物質(水)が液体から気体に変化するときには吸熱が起こり、逆に、気体から液体に凝縮するときには発熱が起こるわけです。こうした物質の状態(相)が変化するときに必要とされる熱エネルギーを総称して「潜熱と呼びます。
水の場合の「潜熱」は、水→水蒸気のときに必要な熱を「蒸発潜熱」、水蒸気→水のときに得られる熱を「凝縮潜熱」と分けて考えると良いかもしれません。それでもイメージしにくいので、拾ってきた図で示しますね。

ちなみに、物質の状態(相)が変化しない熱を「顕熱と呼びます。やかんでお湯を沸かすことをイメージしてください。水を火にかけると温度が上がってきますが、水は液体のままで相の変化はありません。この状態が顕熱による温度上昇です。このとき、火から与えられた熱は熱エネルギーとして水(お湯)に蓄えられています。
さらに時間が経つと水の沸騰が始まります。1気圧のときの純水の飽和温度(沸点)は言うまでもなく100℃で、これ以上水の温度は上昇しません。水が蓄えきれなくなった熱は蒸気となって、大気中に拡散していきます。

顕熱・・・水が水の状態のままで温度変化するときの熱エネルギー
潜熱・・・水が蒸気になるときの熱エネルギー、正確には、水⇔氷のときの熱エネルギーも潜熱

さて「発熱量」とは、ある一定の状態(たとえば、1気圧、20℃)に置かれた燃料を、十分な乾燥空気で完全燃焼させ、その燃焼ガスを元の温度(この場合20℃)まで冷却したときに計測される熱エネルギー量ですが、発熱量には「高位発熱量」と「低位発熱量」という2つの定義があります。

燃焼ガスに含まれる水蒸気が凝縮するときに得られる凝縮潜熱を含めた発熱量を高位発熱量(総発熱量)といい、水蒸気の凝縮潜熱を含まない発熱量を低位発熱量といいます。
したがって、低位発熱量は高位発熱量から水蒸気の凝縮潜熱を差し引いたもので、次式の関係が成り立ちます。

低位発熱量=高位発熱量-水蒸気の凝縮潜熱×水蒸気量

なぜ、こうした2種類の発熱量を用いるのでしょうか?
ストーブやボイラー等は、燃焼ガスを水蒸気の飽和温度以下まで低下させようとすると、凝縮水によって熱交換器の腐食などが懸念されるため、燃焼ガスを水蒸気の凝縮潜熱まで利用することはされていません。なので、燃焼機器の性能を評価(例えば、熱効率80%、とか)する場合、基準となる燃料の発熱量は低位発熱量を用いるお約束になっているようです。
一方、日本の総合エネルギー統計といった資料には、高位発熱量が用いられることが多いようです。
燃料の発熱量や機器の熱量計算には低位発熱量、統計には高位発熱量を用いる、といったところでしょうか。

なお、精製された工業製品である灯油やプロパンガスは水分を含みませんが、木材は大なり小なり水分を含んでいるのが普通です。木材が燃焼するときは、セルロース等の燃焼成分からだけでなく、木材に含まれていた水分からも蒸気が発生します。
一方、木材の高位発熱量は、燃焼成分によって生成した蒸気と、燃料中に含まれていた水分による蒸気の両者の凝縮潜熱を含みますから、これを差し引いた値である木材の低位発熱量は水分によって差が生じることになります。要するに、湿った薪は勢い良く燃えないということです。

JISで規定された灯油の低位発熱量がどれも一定なのに対し、木材は水分によって燃料の性能が変化し、これがややこしい話でもありオモシロイところでもあります。

次回はようやく、木材の発熱量(エネルギー)について触れてみたいと思います。

今回は言葉の定義ばかりでややこしかったかもしれませんが、要するに、木質バイオマス燃料の発熱量は低位発熱量で評価するルールだ、ということです。

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