木質バイオマス利用に役立つ忘備録です。これは!と思った情報を随時アップして参ります。

2014年4月5日土曜日

燃料チップの種類 破砕チップ

引き続き今回は、破砕チップとバイオマス利用のことを整理していきます。

切削チッパーが木材を刃物でチップ化するのに対し、破砕チッパーは突起状や棍棒状のハンマー(機械メーカーによって差異あり)が文字通り木材を叩き壊すことでチップ化します。従って、チップ形状は繊維方向に細長く裂けた形状になり、また、細かく粉状になった木材の割合も増加します。

前回、長尺チップは搬送装置のトラブルの元になるとお話しましたが、粉状の木材もその割合が多いと、チップが塊になって搬送されない状況いわゆるブリッチが生じやすくなり、粉に水分が多いと冬期間にチップが凍りついてしまうこともあります。

その一方で、切削チッパーがピュアな木材だけをチップ化できるのに対し、破砕チッパーは鉄クギの残った建築廃材から土砂で汚れた枝条まで、切削チッパーが敬遠するような木質原料もチップ化することが可能です。
そのため、原料となる木材が産業廃棄物として処理料を払って引き取られるもの、いわゆる逆有償となるケースもあり、結果的にチップの価格も安価になっています。
製材所の端材          建築廃材
震災ガレキ           林地残材
ただし、一口に破砕チップと言っても、原料によって品質が大きく異なるため注意が必要です。上の写真は、ある事業体が供給する破砕チップを原料別に比較してみたものですが、
1)製材所の端材は樹皮混じりの木材のみで水分はまずまず
2)建築廃材は所々に塗料など見えるものの良く乾燥している
3)震災ガレキは土砂混じりで水分も多い
4)林地残材は不揃いで水分が多い
といった具合で、品質にはかなりの差があることがわかります。

水分管理については、チップ化が解体工事や林地開発などの現場で行われることが多いため、なかなか難しい事情があるようです。いったんチップ化施設まで運び、乾燥期間を経てからチップ化すれば良いのですが、この場合は積み下ろしが2度手間になり、コストアップになりますね。

破砕式のチッパーで有名なのは、俗に「ガラパゴス」と呼ばれるマシンでしょう。正確に言うと、ガラパゴスとは某社の商品名で、岩石を破砕する機種のことを指します。木質系の破砕機は「リフォレ」という商品名で区別されています。
ちなみにリフォレとは、自然の物を自然に帰す「森林再生」の願いを込めて、英語の「reforest(リフォレスト:森林を再生させる)」をもじった造語だそうです。

マシンの処理能力は大きく、移動式の切削チッパーが時間当り2㎥/程度の処理量であるのに対し、20~100㎥/時間とおよそ10倍~50倍の能力があります。
また、内部にフルイ(スクリーン)装置を備え、なるべく長尺チップを出さないよう、チップの大きさを一定にそろえる工夫がされています。
自走式破砕機
けん引式破砕機

余談になりますが、この手のマシンは例の東日本大震災のガレキ処理で大活躍しました。正確な台数はわかりませんが、岩手県でも沿岸地域に相当数のマシンが投入され、処理されたチップの一部は宮古市にあるパーティクルボード工場「宮古ボード工業」に買い取られ、その名も「復興ボード」となって有効活用されるほか、宮城県内の工場のボイラー熱源として、あるいは福島県のボード工場へ、さらに遠くは会津市の「グリーン発電会津」にまで運搬され燃料として活用されました。

破砕チップの特徴及び使用上の注意点をまとめると、
1)チップの形状に留意しボイラーの搬送装置とのマッチングを確認することが必要
2)原料によって水分の差異が大きいためその確認が必要
3)異物混入のリスクはあるものの建築廃材チップは安価なうえに熱量も得られる
4)供給事業体のほとんどが産廃処理業者でありチップの配送が可能なことが多い

発電施設や工場の蒸気ボイラーといった大規模ボイラーの場合、搬送装置も大型になるためチップの形状が問題になることは少なく、また、大規模ボイラーは熱容量が大きいため多少の水分変動も許容されます。そして何より、建築廃材は安価で熱量も得られるため、引く手あまたの建廃チップは枯渇している状況です。

一方、小規模ボイラーでの利用はマッチングに注意する必要があること、林地残材の活用に関しては水分管理の手法を確立していく必要があるでしょう。


さて、これまでずいぶん木質バイオマス利用と水分のことをお話してきました。では、チップの水分を知るには具体的にどうしたら良いのでしょう?次回はそのあたりを整理してみたいと思います。

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