木質バイオマス利用に役立つ忘備録です。これは!と思った情報を随時アップして参ります。

2014年9月15日月曜日

大分県日田市「天瀬発電所」を見学してきました

このところ林業や木材関係のニュースで、木質バイオマス発電のことが掲載されない日はありませんね。言うまでもなくFIT法の影響ですが、法律の威力ってすごいものだと思います。それだけに、責任も重大だと言えるわけですが。

バイオマス発電の計画も、発電効率を追って大型化する傾向にあるようです。例えば、
「住友商事、愛知県半田市に日本最大級のバイオマス発電所を建設開始」
http://plant.ten-navi.com/news/4070/

「愛知県半田市におけるバイオマス発電所建設開始について」
http://www.sumitomocorp.co.jp/news/detail/id=27923

愛知県のそれは、7.5万kWのバイオマス発電とのことですが、これって先日取り上げた「ウッティかわいバイオマス発電」の15倍ですよ!確かに5,000kW程度では本格的な発電所とは呼べないのかもしれませんが、それにしても、こんな巨大な規模でもバイオマスで動かせるんですね。

その秘密は何といっても、輸入チップやパームヤシ殻を燃料にしているからでしょう。現地で集積している未利用バイオマスを大量に仕入れて、コンテナ船で日本に運んで発電するわけですね。

バイオマスが集積している地域は途上国がほとんどでしょうから、エネルギーかけて日本に運ぶよりも、できることなら現地で発電して、その国の経済力や教育水準を高めることに使えば良いのになぁ、などと思ってしまうのは、自分が経済に疎いからでしょうか?商社の皆さんとか、たいへんなご努力をされていことは重々知りつつも、FIT法の影響力の大きさにモヤモヤしたものを感じてしまいます。


さて、前置きが長くなりましたが、先日、大分県日田市のバイオマス発電施設である株式会社グリーン発電大分「天瀬発電所」を見学する機会に恵まれたので、「ウッティかわいバイオマス発電」と比較しながらご紹介したいと思います。というのも、この2つの発電所はバイオマスの調達方法は異なるものの、規模的にまったく同一だからです。
まずは、発電施設のスペックなど。

■所在  大分県日田市天瀬町五馬市245-4
■発電出力  5,700kW(うち、施設内利用700kW)・・・一般家庭の10,000戸分相当(1戸当り4.2MWh/年として)
■ボイラー形式  流動層ボイラー
■実際蒸発量  25,000kg/h(ボイラー出力15,700kW相当)
■蒸気タービン形式  抽気復水タービン
■木質バイオマス使用量  60,000トン/年(全量、間伐材等由来の木質バイオマス)
■バイオマス買取価格  7,000円/トン(生材)

発電出力、ボイラー形式はほぼ同一。違いといえば、
1)「かわい」は利用するバイオマスの半分が自社工場の端材、残り半分が買取りだったのに対し、「天瀬」は全量が買取りとなっている。
2)バイオマスの買取り価格が、「かわい」が5,000円/トン程度であるのに対し、「天瀬」は7,000円/トンと高い。

こうしたバイオマス調達の違いを見ると、「天瀬」のほうが「かわい」よりも事業化のハードルが高かったような気がします。ただし、「天瀬」の立地する日田市の取組みとして、市内全域の森林で森林経営計画を策定済みであることが挙げられます。
これにより、日田市内から伐採された木材であれば、原則的に伐採届の手続きさえ行えば、間伐材等由来の木質バイオマス(間伐材・保安林材・森林経営計画材・国有林材)の認定を受けられることになります。
発電所としても、材の集荷範囲は半径50kmと想定しており、この範囲で無理なく操業できる規模として5,000kWクラスが選定されたそうです。これら認証材の証明書の管理・整理に相当な事務労力を費やしている、とのこと。

また、バイオマスの買取価格を7,000円/トン(生材)とし、水分の多寡は問わない決まりにしたそうです。例えば、雨の日に材を持ち込めば発電所としては不利になりますが、7,000円/トンの単価の中でこれを吸収しているとのこと。この単価は、材を集めるためのインセンティブとなるよう、かつ、他の製材業などを圧迫することのないよう、慎重に検討したとのことです。
なお、材積(㎥)と重量(トン)の換算係数は「1」、すなわち1㎥=1トンとしているそうで、これは事前に実測した結果によるとのこと。かなり水分の多い材を想定していることが分かります。

材の水分の多寡を問わない代わりに、「天瀬」には「かわい」に無い装備がありあます。それが、チップの水分を調整するロータリーキルンで、この装置のおかげで、多少水分の高い材であっても安定してボイラーで燃焼させることが可能となっています。
チップ化された材は、ロータリーキルン(右側の水平になった筒)を通ってボイラーに送られていきます。ロータリーキルンは木質チップの熱源(左側の縦の筒型のボイラー)で暖められていますが、この熱源は発電とは無関係でFITに算定されないため、建築廃材チップを使用しているそうです。

ちなみに、FIT対応バイオマス発電所の第1号といわれる福島の「グリーン発電会津」も、発電用ボイラーに投入する前段階でチップの水分調整をしていますが、「会津」はロータリーキルンではなくチップの搬送コンベアーを下部から熱する構造でした。「天瀬」は後発だけあって、より積極的に効率よく水分を調整する仕組みになっていると思いました。

バイオマス材の受入れはトラックスケールによるもので、「かわい」でもどこでも変わりありません。
敷地いっぱいに材が積まれていましたが、隣接地にまだ空きスペースがあるそうで、できれば2~3ヶ月分をストックし、天日乾燥させながら安定した発電を心がけたい、とのこと。
なお、燃焼灰は山林からの木材だけを燃焼させているため非常にクリーンで、廃棄物ではなく有価物として売却している模様。具体的に何の用途に売却しているかは企業秘密とのことでしたが、廃棄物として経費がかかるのと比べ、有価物として売却できることが経営上有利になっているとのお話でした。

まとめになりますが、やはり、他のバイオマス発電所と同様、熱利用がなされていないのが残念ですが、大分県日田市という林業が盛んな地域で、低質材の売り先として意義のある取組みであると評価できました。

この発電所が無かったら、この地域の低質材が7,000円/トンで売れることは無かったでしょう。九州はバイオマス発電計画が乱立気味の様相ですが、「天瀬発電所」は日田市の地域に根ざした発電所として、どうか末永く運営していただきたいと願うものです。

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