木質バイオマス利用に役立つ忘備録です。これは!と思った情報を随時アップして参ります。

2014年12月7日日曜日

木質ガス化コジェネレーションを見学しました(その1)

すっかり更新をサボってました。これでもイロイロと忙しくて!

これからも、施設見学や基礎知識を交えながらボチボチと続けて参りますが、今回は、小規模・分散型「木質ガス化コジェネレーション」の見学レポです。
ご存知のとおりコジェネレーションとは、熱源から電力と熱を生産し供給するシステムの総称のことですから、何も木質バイオマスに限った話ではありませんし、大規模なものでは、中国木材鹿島工場に隣接する神之池バイオエネルギー株式会社も、中国木材からのバークや端材で発生した電気と蒸気を、今度は中国木材(及び、近くの飼料工場)に供給しており、これも一種のコジェネレーションであり評価できる取組みでしょう。

木質バイオマス関係の識者の間では以前から、発電のみを評価し熱利用に繋がらない現行FIT法への批判があり、小規模・分散型のコジェネレーションを推進すべき、との意見が聞かれますが、じゃあ、その具体例・成功事例はというと、答えに乏しいのが正直なところかと思います。

ところで、「ガス化発電」というと国内では、木質バイオマスでまともに稼働している施設が、ほぼ見当たらないのが現状ではないでしょうか?しばしば、タール分やカーボン(煤)でガス化装置やガスエンジンが閉塞して不具合が発生、というケースを耳にします。ガス化発電に関して国内では、一種のトラウマのような雰囲気が漂っている感じです。(業者の方、スイマセン!)

ところが、今回見学したドイツ「Spanner(スパナー)社」のガス化コジェネレーションは、ドイツ国内で200台の納入実績、海外も含めると300台近い納入実績があり、さらに業績を伸ばしているとのこと。いずれにせよ、日本国内の現状と違いがありすぎる、その理由は何なのかを知りたくて、日本の納入第1号となる福島県郡山市某所の施設を見学して参りました。


まずは、コジェネレーション施設のスペックからですが、詳しくはこちらのHPをご覧いただくのが早いです。
■エコライフラボ 木質コジェネレーション Woodgas CHP

ざっとスペックを列挙(コピペ)しますと、
名称: エコライフラボWoodgasCHP45
発電能力: 45kW electric
ボイラー能力: 105kW thermal
燃料消費: 45kg/h
年間動作時間: 6000時間
年間燃料消費: 240トン
年間発電量: 15万kWh = 540GJ
年間発熱量: 30万kWh = 1.08TJ
燃料: 自然のままの木質チップ、乾燥済み
形状: 基準G30-G40
含水: 最大13%
細粉割合: 4mm以下最大30%

上記を簡単に訳せば、1kgのチップで1kWhの電力と約2kWhの熱が得られるシステムということになります。この熱効率をざっと計算しますと、含水率(乾量基準)13%=水分(湿量基準)12%チップの低位発熱量は約4kWhですから、エネルギー効率は(1kWh+2kWh)÷4kWh=75%ということになり、発電のみの26%と較べ段違い約3倍の高い効率になる理屈です。要するに、木質バイオマス資源を有効活用していることになりますね。
ただし発電だけを見ると、25%と同程度なのが不思議なところです。

発電能力45kWの規模ですが、一般家庭の年間消費電力を1戸当り4.2MWh/年(4,200kWh/年)程度とすると、45kW☓6000時間÷4200kWh/戸≒64戸分に相当します。
また、ボイラー能力105kWの規模ですが、一般的なFF式石油ストーブの出力は5kW程度ですから21台分に相当しますが、ただしこれは、21台のFFストーブが6000時間(250日)Maxで運転する意味ですから、相当な熱出力があることになります。

実際の運用では、一定時間を運転するとメンテナンスが必要になるため、装置を複数台、場合によっては10台以上並列に接続して、1台がメンテナンス中でも全体として支障なく運用できるようシステムを組むのがベターなのだそうです。そのようなシステムで、ホテルや公共施設の熱・電をまかなうのが、得意とする用途だと思われます。

YouTubuにも紹介ビデオがありました。かなりオモシロイです。
20 Spanner Re² wood cogeneration plants in Latvia

上の写真でお分かりのとおり、装置は配管むき出しで、外観からもおおよそ仕組みが理解できます。Spanner社のHPから図を勝手に拝借してますが、
1)チップは中央の筒に貯められる
2)右側のreformerでチップをガス化する
3)左側のgas-filterでガスを浄化する
4)ガス燃料はオットーサイクル(4サイクル)のエンジンを駆動し発電機を回す
といった流れになります。

ガスエンジンはV型8気筒(排気量は未確認です、スイマセン)の立派なもの、V8といえばF1エンジンのコスワース・DFV、あるいはマッドマックスのV8インターセプター並かよ!ってくらいカッコイイ代物ですが、以前見学した岩手県葛巻町のガス化発電ではV型12気筒のガスエンジンが接続されており、これだとフェラーリ並でさらにカッコ良くてしびれる(笑)、エンジンは求められる出力に応じて多気筒化するのだと思います。
手前の黒い部分がV8のガスエンジン、奥のグレーの箱が発電機です。男の子なので、こういうメカを見ていると楽しくて仕方がありません(笑)

自動車エンジンとの大きな違いを発見しました。それは、熱回収の仕組みです。
赤の点線で囲んだ2つの部分がプレート式の熱交換器で、上がエキゾーストマニホールド(排気ガスの通るパイプ)からの排ガスの熱を、下が冷却水からの熱を、それぞれ回収する仕組みになっているようです。自動車用エンジンの場合その目的は車の動力で、熱は排ガスやラジエーターから捨てるだけ(一部、暖房に使用)ですが、そんなマヌケなことはコジェネ屋はやらない、ということです。

そういえば、ガス化装置の側にも二重管式の熱交換器がついていました。ガス化の際に発生する熱も無駄なく利用するためですが、得られる熱量は、ガス化装置側よりもガスエンジン側から得られるほうが多いそうです。
ちなみに、装置の大きさは下の写真でお分かりになるかと思います。
以上、装置を見て参りましたが、課題は燃料となるチップの含水率だと理解できました。使用に適したチップの含水率(乾量基準)は最大13%となっていますが、天然乾燥を十分行った木材の含水率、いわゆる平衡含水率は屋外で15%程度と言われています。従ってこのシステムは、人工的に乾燥されたチップが必要なのです。

逆に言えば、乾燥チップさえ安定的に供給できれば、化石燃料にも原子力にも頼ること無く、地域で熱・電供給が可能となる理想的なシステムということになります。次回はこのシステムのチップ乾燥について整理してみたいと思います。

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